労働時間の柔軟化

【新卒向け】法定労働時間を柔軟にする制度

前回の記事では、時間外・休日労働に関する規制についてご紹介しました。

今回は第三弾として、「法定労働時間を柔軟にする」制度についてご紹介します。

 

第一弾第二弾で挙げた労働時間規制の基本的枠組みに対し、これを柔軟化するための特別の制度が、労働基準法上では大きく2つに分けて定められています。

1つは、法定労働時間の枠を柔軟化する制度、もう1つは労働時間の算定方法についての特則です。

 

法定労働時間の枠を柔軟化する制度

①変形労働時間制

労働時間を一定期間で平均して週40時間を超えていなければ、時間外労働はないものとする(1週または1日の法定労働時間の規制を解除する)制度です。

たとえば、変形制の単位時間を4週間とした場合、月末の週の所定労働時間(契約上労働時間と定められた時間)を45時間としても、その他の週の労働時間を短くして4週間で160時間を超えないようにすれば、月末の週の週40時間を超える部分も時間外労働とはならないものとされます。

変形労働

現行の労働基準法は、1ヶ月単位、1年単位、1週間単位の3つの変形労働時間制を定めていますが、このなかで標準形となるのは1ヶ月単位のものです。

1ヶ月単位の変形労働時間制は、事業場の過半数代表との労使協定または就業規則によって、単位期間における各週・各日の所定労働時間を具体的に特定して導入することができます。

これに対し、1年単位の変形労働時間制は、変形期間が長期にわたるため、就業規則ではなく過半数代表との労使協定によってのみ導入することができ、1日10時間・1週52時間などの労働時間の上限も設定されています。

また、1週間単位の変形労働時間制は、小規模な旅館・飲食店など予め労働時間を特定できない事業を想定した制度であり、その予測困難性ゆえに、過半数代表との労使協定によってのみ導入可能で、1日10時間の労働時間の上限が設定されています。

 

②フレックスタイム制

清算期間とその期間における総労働時間(週平均40時間以内)を定め、労働者に始業・終業時刻の決定を委ねる制度です。

ここでは、それぞれの日に何時から何時まで働くかを労働者の自由な選択に委ねる代わりに、ある日やある週において法定労働時間を超えても、清算期間での法定労働時間の総枠(例:清算期間が4週間の場合160時間)を超えない限り、時間外労働にはならないものとされます。

2018年の働き方改革関連法は、フレックスタイム制の清算期間の上限を1ヶ月から3ヶ月に延長し、より柔軟にこの制度を利用できるようにしました。

フレックスタイム

 

労働時間の算定方法についての特則

労働時間の計算は、実際に働いた時間(実労働時間)によって行うのが原則です。

労働基準法は、この実動時間による労働時間算定の例外として、実際に何時間労働したかにかかわらず、一定時間労働したものとみなすという制度を2つに分けて定めています。

 

①事業場外労働の労働のみなし制

労働者が事業場の外で業務に従事し、その労働時間の算定が困難な場合に、一定時間労働したものとみなす制度です。

たとえば、外回りの営業、報道記者、出張などの場合に用いられます。

このみなし時間は、原則として所定労働時間とされるが、その業務を行うのに所定労働時間を超えて労働することが通常必要になる場合には、通常必要とされる時間(事業場の過半数代表との労使協定でその時間を定めることができる)労働したものとみなされます。

事業場外労働の労働のみなし制

 

②裁量労働のみなし制

業務遂行について労働者に大きな裁量が認められるものについて、実労働時間によらず、一定時間労働したものとみなす制度です。

たとえば、この制度の適用を受けると、実際に働いた時間が週20時間でも週60時間でも、一定時間(たとえば週40時間)だけ働いたものとみなされます。

裁量労働のみなし制

この制度には、さらに以下の2種類があります。

・専門業務型裁量労働制研究開発やシステムエンジニアなどの専門職労働者を対象としており、厚生労働省令によってその対象業務が限定的に列挙されています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項)。

・企画業務型裁量労働制事業の運営に関する企画・立案・調査・分析の業務を行う一定範囲のホワイトカラー労働者を対象としています。
対象業務が抽象的なために、その射程や運用が広がりすぎることを抑制するため、単なる事業場の過半数代表との労使協定ではなく、その事業ばに労使半数構成の労使委員会を設置し、その5分の4以上の多数で決議するという加重された要件のもとで導入できます。

 

以上、第三弾として「法定労働時間を柔軟にする」制度についてご紹介しました。

 


 

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